協力隊を終わっても内川に住みつづけながら何して食ってるんだか自分でもわからず、なんやかんやで食っていけている身ながら、ひとつだけ、唯一こんな仕事をしていますと言えるものがあります。それが竹加工です。まだまだ、お師匠について勉強中の見習いでござい。

竹屋の商品について

竹の産地

 たけのこの名産地として知られる別所には、もう一つ特産といえるものがあります。竹林整備の際に間引く竹です。

竹林管理

 良質なたけのこを産する竹林は、やさしく陽が差しているくらいにまばらな竹林が理想とされています。きれいに間引かれた竹林は明るく、風は妨げられるものもなくわたっていって涼しい。竹の穂先は風がなくても揺れているので、頭上高くで結ばれた葉叢がこすれて、いつまでもさらさらとせせらぎみたいな音が降っています。ここらで「傘を差して歩けるくらい」というのを指標にして間引いた竹林には、どこまでも明るく涼しい、静かな世界があります。

整備された竹林

 竹にも年齢があって、壮年は3、4、5年にあたり、この多産な時期を過ぎた老いらくの竹はたけのこをうむ力が落ちると言われています。それで、たけのこ農家は竹林をなるべく壮年の竹主体で管理するために、たけのこの時期によい竹に育つ見込みのあるものを親竹を立てて、かわりに秋に老年の竹を間引くことで、毎年、竹林を更新しています。

春、親竹を立てる

 たけのこ収穫の時期が過ぎても、竹林にはぽつりぽつりとたけのこのなり損ないみたいなか細いのや、ほとんど笹みたいな枝だけのが生えてきます。容赦なく切り倒されるそれらの中にあって、親竹に見込まれたものは、脱皮したてのまだ柔らかそうな薄緑の稈を高く伸ばし、穂先を周囲の枝葉の重なりの間に割り込んでいきます。たけのこの時期を過ぎた頃を竹林の秋というのは、たけのこを産みつくした竹の葉が精魂尽き果てたように黄色く褪せていく様子を捉えたものですが、周囲の広葉樹林は春に芽吹いた葉が緑を増していくなかにあって、別所の竹林が黄色く衰えていく姿は、たけのこ掘りに疲れたたけのこ農家そのものの象徴にもみえて、なかなか思うところがありますが、その衰弱の色いちじるしい竹林にも、親竹として立てた竹が生長し、頭上高くで展開した枝葉の瑞々しい新緑には、新生のよろこばしさが満ちています。

 たけのこの秋の本当の季節は晩春か初夏くらいなので、次には夏が来て、竹の葉が緑を取り戻すころには、新しい竹の葉も周囲の竹と遜色ない濃緑に色づいていて、立派に竹林の仲間入りをしています。

秋、老竹を間引く

 春に立てた親竹の分だけ竹林は密になるので、秋には、年古りた竹を間引きます。切り倒した竹は、枝を払って、道が近ければ搬出し、運び出せそうになければ一箇所に集めて燃やします。いまだに竹を1本1本担いで運ぶため、間引き作業は春のたけのこ掘りにも引けをとらない重労働で、しかもこの労働にはたけのこ掘りのころの明朗さはありません。長い竹を背負って運ぶ姿がふだんより小さく見えるのは腰を丸めているせいだけではないような気がします。

切り出した竹を搬出する

 その上、竹を燃やすことは簡単ですが、反面、火力をコントロールすることは難しくて、作業はたまらなく暑く苦しいものになります。竹は油を含んでいて一度火がついてしまえば勢いはとどまらず、火柱はわたしたちの背を凌いで高く燃えさかり、頭上十数メートルほどの高さで周囲の竹の穂先が火炎の真上にしなだれると、葉を焼き焦がして、竹を枯らしてしまいます。時折、竹の節が爆ぜて鋭い破片が飛んでくるその激しい火炎の中に次々に竹をくべなければいけない竹焼きは危険な仕事です。

竹の良材

 竹稈を材として活用する際には、5年以降の竹がよいとされています。たけのこ農家が間引くものは基本的に良質なたけのこを産む4、5年を過ぎた竹なので、たけのこ農家が秋に間引いて搬出する竹はしぜんと材としても優れた質のものとなります。
 それで、内川はたけのこのみならず、竹の一大産地でもあるのです。 内川のたけのこ農家が集材した竹は、別所の竹屋で加工するだけではなく、業者を通じて県内外ではば広く利用されています。

別所の竹屋

別所竹加工生産組合、通称別所の竹屋は平成3年の設立から、内川のたけのこ生産林から出る間伐材を活用して、さまざまな製品を製造販売してきました。

別所の竹屋の商品

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